Claude Codeエラー診断入門: ログから再現テストまでの実務手順
Claude Codeでエラー診断を再現、仮説、回帰テスト、検証まで進める実務手順。ログの読み方と失敗例も解説。
エラー診断は「赤いログを見て勘で直す作業」ではありません。失敗した事実を、再現できる証拠に変える作業です。Claude Codeを使うと、この証拠集め、仮説作り、最小再現、テスト追加、修正、検証までを一つの流れにできます。
最初に押さえる言葉は3つだけです。ログは、コマンドやアプリが出した記録です。スタックトレースは、エラーに到達するまでに呼ばれた関数の道筋です。最小再現は、余計な画面や設定を削っても同じ失敗が起きる小さな例です。
Claude Codeに「直して」と丸投げするより、「どの証拠を見て、どの仮説を検証し、何で直ったと判断するか」を渡した方が、修正の質は上がります。この記事では、初心者でもそのまま使える形で、エラー診断の型をまとめます。
関連する基礎として、ビルド失敗を15分で分ける Claude Codeビルドエラー切り分けループ、ログ文言の読み方を整理した Claude Codeエラーメッセージ解読、報告の型を作る Claude Codeバグ報告テンプレート も合わせて読むと実務に落とし込みやすくなります。
エラー診断の全体像
flowchart LR
A["失敗コマンドを保存"] --> B["最初の失敗行を探す"]
B --> C["原因仮説を3つに絞る"]
C --> D["最小再現を作る"]
D --> E["回帰テストを追加"]
E --> F["最小修正"]
F --> G["同じコマンドで検証"]
G --> H["引き継ぎメモを残す"]
この順番を守る理由は単純です。先に修正へ飛ぶと、たまたま通っただけなのか、本当に原因を消したのかが分かりません。特にClaude Codeは広い範囲を読めるので、指示が曖昧だと「ついでの整理」まで提案することがあります。診断の目的は、変更を増やすことではなく、失敗の原因を狭めることです。
まずは次の4点を揃えます。
| 見るもの | 目的 | Claude Codeに渡す例 |
|---|---|---|
| 失敗したコマンド | 再現手順を固定する | npm run build、node --test |
| 最初の失敗行 | ログ末尾のノイズを避ける | TypeError、ERR_MODULE_NOT_FOUND |
| 実行環境 | 環境差分を切り分ける | Node.js版、OS、CI名 |
| 期待値 | 正しい挙動を決める | nullなら空配列、404なら再試行しない |
JavaScriptの標準的なエラー名は MDNのJavaScript error reference が役に立ちます。Node.jsでは Node.js Errors docs に、error.message は変わる可能性があるため error.code を見た方が安定する、という考え方が示されています。PlaywrightのE2Eテストなら Debugging Tests | Playwright のInspector、Trace Viewer、VS Code連携を参照すると、画面操作の失敗をログだけで判断しなくて済みます。
Claude Codeに任せる7ステップ
実務では、次のプロンプトを1つの作業単位として使います。
claude -p "
次のエラーを診断してください。
1. 失敗したコマンドを確認する
2. 最初の失敗行と関係ないログを分ける
3. 原因仮説を最大3つ出す
4. 最小再現を作る
5. 回帰テストを追加する
6. 最小の修正だけを入れる
7. 同じコマンドで検証し、引き継ぎメモを書く
制約:
- 関係ないリファクタリングは禁止
- 既存の公開APIを変える場合は理由を書く
- 検証コマンドが失敗したら、修正済みと言わない
"
ここで大事なのは「最大3つ」です。仮説を10個並べると、結局どれも検証されません。たとえば Cannot read properties of undefined なら、APIレスポンスの形が違う、初期値が未設定、非同期読み込み前に描画している、の3つで十分です。
ユースケース1: Reactのundefinedエラー
典型例は、APIが null を返したのに users.map(...) を呼んで落ちるケースです。エラー文だけを見るとReactの問題に見えますが、実際にはデータの形の問題です。
// user-list.mjs
export function names(users) {
if (!Array.isArray(users)) {
return [];
}
return users.map((user) => user.name ?? "(no name)");
}
// user-list.test.mjs
import assert from "node:assert/strict";
import test from "node:test";
import { names } from "./user-list.mjs";
test("names returns an empty array when the API returns null", () => {
assert.deepEqual(names(null), []);
});
test("names keeps valid user names", () => {
assert.deepEqual(names([{ name: "Masa" }]), ["Masa"]);
});
node --test user-list.test.mjs
古い実装が return users.map(...) だけだった場合、このテストは落ちます。Claude Codeには「この失敗を再現するテストを先に追加し、通すための最小修正を入れてください」と頼みます。ガードを入れるだけで済むなら、状態管理やAPI層を大きく変える必要はありません。
ユースケース2: Node.jsのENOENTと依存関係エラー
ENOENT は、ファイルやディレクトリが見つからないときによく出ます。落とし穴は、ローカルでは存在する config/local.json が、CIやDockerイメージには入っていないケースです。
見る順番は、失敗コマンド、error.code、error.path、DockerfileのCOPY、.gitignore、CIのworking directoryです。Claude Codeには、次のように渡します。
claude -p "
Node.jsのENOENTを診断してください。
error.code、error.path、実行ディレクトリ、Dockerfile、CI設定を見てください。
ローカル専用ファイルに依存しない修正だけ提案してください。
"
ここで「ファイルを作って終わり」にすると、本番ではまた落ちます。設定ファイルが必須なら起動時に明確なメッセージを出す、任意ならデフォルト値に逃がす、CIで必要ならサンプル設定をコピーする、という判断まで必要です。
ユースケース3: PlaywrightのCIだけ失敗するテスト
Playwrightのタイムアウトは、アプリのバグ、テストの待ち方、CIの遅さ、認証切れ、ネットワーク差分が混ざります。スクリーンショット1枚だけで直そうとすると、待機時間を伸ばすだけの修正になりがちです。
まずはTrace Viewerを残します。
// playwright.config.ts
import { defineConfig } from "@playwright/test";
export default defineConfig({
use: {
screenshot: "only-on-failure",
trace: "retain-on-failure",
video: "retain-on-failure",
},
});
Claude Codeには、失敗したspec、locator、期待した画面、traceの保存場所、CIの実行コマンドを渡します。指示は「timeoutを増やす前に、待つべきUI状態、APIレスポンス、認証状態を切り分けてください」にします。Playwrightの公式デバッグ手順と組み合わせると、ログだけでは見えないDOM状態も診断できます。
ユースケース4: TypeScriptの連鎖エラー
型エラーが20個出ると全部別の問題に見えます。しかし、最初の1つがAPI型の変更で、残りは連鎖しているだけのことがあります。
npx tsc --noEmit --pretty false 2>&1 | tee tsc.log
claude -p "
tsc.logを読んで、最初に直すべき型エラーを1つ選んでください。
派生エラーと根本原因を分けてください。
修正後はnpx tsc --noEmit --pretty falseで検証してください。
"
ポイントは、全部を同時に直させないことです。まず根本の型定義を直し、同じコマンドを再実行し、残ったエラーだけを見る。この小さなループが、余計な型アサーションを増やさないコツです。
ログとスタックトレースを分類する小さな道具
長いログを読む前に、代表的なパターンへ分類すると初動が速くなります。次のファイルはそのまま実行できます。
// triage-log.mjs
import fs from "node:fs";
const sample = `
TypeError: Cannot read properties of undefined (reading 'map')
at ProductList (src/ProductList.tsx:42:18)
`;
const input = process.argv[2]
? fs.readFileSync(process.argv[2], "utf8")
: sample;
const rules = [
[/ERR_MODULE_NOT_FOUND|Cannot find module/i, "依存関係またはimportパス"],
[/ENOENT/i, "ファイルパスまたは実行ディレクトリ"],
[/TypeError:.*undefined|Cannot read properties/i, "データ形状または初期値"],
[/Timeout.*expect|locator/i, "E2Eの待機条件または画面状態"],
[/TS\d{4}/, "TypeScriptの型エラー"],
];
const matches = rules
.filter(([pattern]) => pattern.test(input))
.map(([, label]) => label);
console.log(matches.length ? matches.join("\n") : "分類不能: 最初の失敗行を確認");
node triage-log.mjs
node triage-log.mjs tsc.log
この道具は完璧な診断器ではありません。目的は、Claude Codeに渡す前に「依存関係なのか、データ形状なのか、E2Eの待機なのか」を粗く分けることです。
再現できるバグ報告テンプレート
Claude Codeに調査を頼む前に、バグ報告をこの形へ整えると、会話の往復が減ります。GitHubで運用するなら、公式の GitHub issue forms syntax を使って同じ項目をフォーム化できます。
## 概要
何が壊れているかを1文で書く。
## 失敗したコマンド
`npm run build`
## 期待した結果
ビルドが成功し、`dist/` が生成される。
## 実際の結果
`TypeError: Cannot read properties of undefined` で失敗する。
## 最初の失敗行
`src/components/ProductList.tsx:42:18`
## 再現手順
1. `npm ci`
2. `npm run build`
## 環境
- Node.js: 22.x
- OS: Windows 11 / GitHub Actions ubuntu-latest
- Branch: feature/product-list
## すでに試したこと
- lockfile再生成
- APIレスポンスのfixture確認
## 修正後に通す検証
- `node --test`
- `npm run build`
このテンプレートは、人間への報告にもClaude Codeへの入力にも使えます。大切なのは「困っています」ではなく、「この手順で同じ失敗が起きます」と言えることです。
よくある失敗と落とし穴
1つ目は、ログの最後だけを貼ることです。最後の行は「処理が止まった場所」であって、原因とは限りません。最初の失敗行と、その直前の数十行を残します。
2つ目は、エラー文の文字列だけで条件分岐することです。Node.jsではメッセージが変わる可能性があるため、可能なら error.code や name を使います。
3つ目は、最小再現を作らないことです。巨大な画面のまま直すと、偶然別の状態で通っただけなのか判断できません。
4つ目は、テストなしで修正することです。回帰テストがない修正は、次のリファクタリングで同じバグを戻します。
5つ目は、Claude Codeに広すぎる権限を与えることです。「関連ファイルを全部きれいにして」ではなく、「この失敗を通すための最小変更」に絞ります。作業範囲の守り方は Claude Codeレビュー運用チェックリスト も参考になります。
引き継ぎメモまで書かせる
修正が通ったら、最後に短いメモを残します。これはレビュー担当者だけでなく、翌週の自分を助けます。
## 診断メモ
- 失敗: `npm run build`
- 原因: APIがnullを返すケースで`users.map`を呼んでいた
- 修正: `names()`で配列以外を空配列に正規化
- 回帰テスト: `node --test user-list.test.mjs`
- 検証: `npm run build`成功
- 未対応: API側でnullを返す仕様が正しいかは別issueで確認
Claude Codeへの最後の指示はこうです。
claude -p "
今回の診断メモをMarkdownで作成してください。
原因、変更点、追加した回帰テスト、検証コマンド、残リスクを
レビュー担当者が5分で読める長さにまとめてください。
"
相談・テンプレート導入
個人開発なら、この記事のコマンドとテンプレートをコピーするだけで十分です。チームで使うなら、ログに含めてよい情報、Claude Codeに渡してはいけない秘密情報、最小再現の保存場所、CIで必ず残すartifact、レビューで求める検証証拠を決める必要があります。
ClaudeCodeLabでは、実務向けの Claude Code教材・テンプレート と Claude Code導入相談・研修 を用意しています。エラー診断を属人化させたくない場合は、バグ報告フォーム、CIトリアージプロンプト、回帰テストの書き方、引き継ぎメモの型までまとめて整備するのが近道です。
この記事で紹介した流れをMasaの保守作業で試した結果、最も効果があったのは「最初の失敗行」「最小再現」「同じコマンドでの再検証」を固定したことでした。Claude Codeの提案をそのまま信じるのではなく、証拠、仮説、テスト、検証を毎回残すことで、短い修正でもレビューしやすくなりました。
無料PDF: Claude Code はじめてのチートシート
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スパムは送りません。登録情報は厳重に管理します。
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この記事を書いた人
Masa
Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。
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