Claude Code × AWS IAMガイド:最小権限ポリシーを安全に作る実践手順
Claude CodeでAWS IAM最小権限を設計・検証する実践ガイド。Access AnalyzerとCDK例つき。
AWS IAMは、AWSの「誰が、どのリソースに、何をしてよいか」を決める権限の仕組みです。画面では小さなJSONに見えますが、Action: "*"やResource: "*"を雑に許すと、S3の削除、DynamoDBの読み出し、Lambdaの更新まで一気に広がります。Claude Codeに丸投げして「動いたからOK」にすると、便利な自動化がそのまま本番事故の入口になります。
この記事では、Claude CodeをAWS IAMポリシー作成の相棒として使いながら、最小権限を崩さない手順をまとめます。最小権限とは「必要な操作を、必要な対象にだけ許す」考え方です。ポリシーは権限ルール、ロールは一時的に引き受ける役割、プリンシパルは権限を使うユーザーやサービスだと考えると、初心者でも理解しやすくなります。
Masaが実案件で一番失敗したのは、Lambdaの実行ロールに一時的なつもりで広いS3権限を付け、そのまま数週間残したことです。幸い外部流出はありませんでしたが、レビューで見つかった時点で「Claude Codeに出させたポリシーを人間がAWS公式の観点で検証する」流れに変えました。現在は、Claude Codeで下書き、IAM Access Analyzerで検証、人間が差分をレビュー、CDKで固定、拒否されるべき操作もテスト、という順番にしています。
公式ドキュメントを基準にする
IAMは検索記事だけで判断すると危険です。この記事の方針は、次のAWS公式ドキュメントに合わせています。
- Security best practices in IAM
- IAM JSON policy element reference
- Validate policies with IAM Access Analyzer
- Temporary security credentials in IAM
- Permissions boundaries for IAM entities
要点は明確です。人間ユーザーは長期アクセスキーではなくフェデレーションや一時認証情報を使う。ワークロードはIAMロールを使う。権限は最小化する。Access Analyzerでポリシーを検証する。未使用のユーザー、ロール、権限、認証情報を定期的に削除する。この5つをClaude Codeのプロンプトにも明記します。
flowchart LR
A["ユースケースを文章化"] --> B["Claude Codeで下書き"]
B --> C["人間がリソース名を確認"]
C --> D["IAM Access Analyzerで検証"]
D --> E["CDKでコード化"]
E --> F["許可と拒否の両方をテスト"]
先にユースケースを固定する
Claude Codeに「IAMポリシーを書いて」とだけ頼むと、足りない情報を広めの権限で埋めがちです。先に、どの実行主体が、どのAWSサービスに、どの操作だけを行うのかを書きます。
| ユースケース | 実行主体 | 必要な権限 | 明示して避ける権限 |
|---|---|---|---|
| 画像サムネイル生成Lambda | Lambda実行ロール | S3読み取り、S3書き込み、DynamoDB書き込み、SNS通知、ログ出力 | S3削除、全バケット読み取り、IAM操作 |
| 管理画面のアップロード補助 | API用Lambdaロール | 特定prefixへのS3 PutObject、DynamoDB GetItem | バケット全体のList、KMSキー管理 |
| GitHub Actionsからのデプロイ | OIDCで引き受けるCIロール | 1つのCloudFormationスタック更新、対象Lambda更新 | AdministratorAccess、全リージョン操作 |
| 障害調査用の読み取りロール | フェデレーションユーザー | CloudWatch Logs検索、X-Ray参照、該当テーブルのGetItem | 更新、削除、Secret取得 |
この表をプロンプトに含めるだけで、Claude Codeの出力はかなり現実的になります。特に「明示して避ける権限」を書くのが重要です。生成AIは必要権限の列は拾いますが、禁止したい操作は言わないと推測しません。
コピペで使えるLambda実行ポリシー
次の例は、画像をS3から読み、サムネイルを別バケットへ保存し、DynamoDBへ結果を書き、失敗時にSNSへ通知するLambda用です。ロググループはCDKやCloudFormationで事前作成する前提にして、実行ロールにはlogs:CreateLogGroupを渡していません。
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Sid": "ReadSourceImages",
"Effect": "Allow",
"Action": ["s3:GetObject"],
"Resource": "arn:aws:s3:::user-uploads-prod/incoming/*"
},
{
"Sid": "WriteThumbnails",
"Effect": "Allow",
"Action": ["s3:PutObject"],
"Resource": "arn:aws:s3:::user-thumbnails-prod/thumbnails/*",
"Condition": {
"StringEquals": {
"s3:x-amz-server-side-encryption": "AES256"
}
}
},
{
"Sid": "WriteMetadata",
"Effect": "Allow",
"Action": ["dynamodb:PutItem", "dynamodb:UpdateItem"],
"Resource": "arn:aws:dynamodb:ap-northeast-1:123456789012:table/image-metadata"
},
{
"Sid": "PublishAlerts",
"Effect": "Allow",
"Action": ["sns:Publish"],
"Resource": "arn:aws:sns:ap-northeast-1:123456789012:alert-topic"
},
{
"Sid": "WriteLambdaLogs",
"Effect": "Allow",
"Action": ["logs:CreateLogStream", "logs:PutLogEvents"],
"Resource": "arn:aws:logs:ap-northeast-1:123456789012:log-group:/aws/lambda/image-worker-prod:*"
}
]
}
このJSONをpolicy-lambda-image-worker.jsonとして保存し、構文とAWSベストプラクティスの警告を確認します。
aws accessanalyzer validate-policy \
--policy-document file://policy-lambda-image-worker.json \
--policy-type IDENTITY_POLICY \
--query "findings[?findingType!='SUGGESTION']"
Access Analyzerは万能な承認者ではありません。AWS公式の説明どおり、文法、ARN、アクション名、条件キー、セキュリティ警告を確認する道具です。業務上その操作が本当に必要か、アカウントIDやバケット名が本番と一致しているか、削除権限が混ざっていないかは人間が見ます。
Claude Codeには次のようにレビューさせます。
claude -p "policy-lambda-image-worker.jsonをAWS IAMの最小権限としてレビューしてください。
前提: LambdaはS3 incoming/を読み、thumbnails/へ書き、DynamoDB table image-metadataへPutItem/UpdateItemし、SNS alert-topicへPublishします。
確認観点: ワイルドカード、削除権限、Resourceの広すぎ、Conditionの妥当性、CloudWatch Logsの範囲。
出力: Sidごとに risk / reason / safer fix を表にしてください。"
CDKでロールを固定する
手作業でIAMコンソールを直すと、レビュー済みの状態が残りません。TypeScript CDKなら、ロール、ロググループ、ポリシーを同じPull Requestで確認できます。以下はlib/image-worker-iam-stack.tsとして使える最小構成です。
import * as cdk from "aws-cdk-lib";
import { Stack, StackProps, aws_iam as iam, aws_logs as logs } from "aws-cdk-lib";
import { Construct } from "constructs";
export class ImageWorkerIamStack extends Stack {
constructor(scope: Construct, id: string, props?: StackProps) {
super(scope, id, props);
const account = Stack.of(this).account;
const region = Stack.of(this).region;
new logs.LogGroup(this, "ImageWorkerLogGroup", {
logGroupName: "/aws/lambda/image-worker-prod",
retention: logs.RetentionDays.ONE_MONTH,
removalPolicy: cdk.RemovalPolicy.RETAIN,
});
const role = new iam.Role(this, "ImageWorkerRole", {
assumedBy: new iam.ServicePrincipal("lambda.amazonaws.com"),
description: "Execution role for image-worker-prod Lambda",
});
role.addToPolicy(new iam.PolicyStatement({
sid: "ReadSourceImages",
actions: ["s3:GetObject"],
resources: ["arn:aws:s3:::user-uploads-prod/incoming/*"],
}));
role.addToPolicy(new iam.PolicyStatement({
sid: "WriteThumbnails",
actions: ["s3:PutObject"],
resources: ["arn:aws:s3:::user-thumbnails-prod/thumbnails/*"],
conditions: {
StringEquals: {
"s3:x-amz-server-side-encryption": "AES256",
},
},
}));
role.addToPolicy(new iam.PolicyStatement({
sid: "WriteMetadataAndAlerts",
actions: ["dynamodb:PutItem", "dynamodb:UpdateItem", "sns:Publish"],
resources: [
`arn:aws:dynamodb:${region}:${account}:table/image-metadata`,
`arn:aws:sns:${region}:${account}:alert-topic`,
],
}));
role.addToPolicy(new iam.PolicyStatement({
sid: "WriteLambdaLogs",
actions: ["logs:CreateLogStream", "logs:PutLogEvents"],
resources: [
`arn:aws:logs:${region}:${account}:log-group:/aws/lambda/image-worker-prod:*`,
],
}));
}
}
この例は「広い権限を付けて後で削る」作り方ではありません。最初から対象prefix、対象テーブル、対象トピック、対象ロググループを指定します。CloudWatch LogsのためだけにAWS管理ポリシーを付けると便利ですが、複数Lambdaで同じ運用にしたい場合は、上のように明示したほうがレビューしやすくなります。
CIロールは長期キーではなくOIDCにする
Claude CodeをCI/CDにも使う場合、GitHub Actionsのシークレットに長期アクセスキーを置く設計は避けます。AWS公式のIAMベストプラクティスは、一時認証情報とロール利用を重視しています。GitHub ActionsならOIDCでAWSロールを引き受ける構成にします。
{
"Version": "2012-10-17",
"Statement": [
{
"Effect": "Allow",
"Principal": {
"Federated": "arn:aws:iam::123456789012:oidc-provider/token.actions.githubusercontent.com"
},
"Action": "sts:AssumeRoleWithWebIdentity",
"Condition": {
"StringEquals": {
"token.actions.githubusercontent.com:aud": "sts.amazonaws.com"
},
"StringLike": {
"token.actions.githubusercontent.com:sub": "repo:example-org/example-repo:ref:refs/heads/main"
}
}
}
]
}
これは信頼ポリシーです。信頼ポリシーは「誰がロールを引き受けられるか」を決めます。一方、権限ポリシーは「引き受けた後に何ができるか」を決めます。この2つを混ぜると、レビューが急に難しくなります。Claude Codeへの依頼も「信頼ポリシーを見て」「権限ポリシーを見て」と分けます。
よくある落とし穴
1つ目は、Action: "*"を一時対応として入れることです。一時対応は本番では恒久化しがちです。どうしても緊急対応が必要なら、期限付きチケット、CloudTrail確認、削除予定日、Access Analyzerの再実行を同じ作業ログに残します。
2つ目は、S3のARNを間違えることです。s3:ListBucketはarn:aws:s3:::bucket-nameに付け、s3:GetObjectやs3:PutObjectはarn:aws:s3:::bucket-name/prefix/*に付けます。ここを混ぜると、動かないか、広すぎる権限になります。
3つ目は、Lambda実行ロールへIP制限を雑に入れることです。人間がコンソールから呼ぶAPIと、AWSサービスがロールを使って呼ぶAPIでは条件キーの意味が違います。aws:SourceIpで社内IPに絞れば安全に見えますが、LambdaやAWSサービス間呼び出しでは期待どおり動かないことがあります。
4つ目は、拒否されるべき操作をテストしないことです。s3:GetObjectが成功するかだけを見ると、s3:DeleteObjectまで通る事故に気づけません。権限テストでは、成功パスと失敗パスを両方確認します。
5つ目は、Claude Codeの説明を公式仕様の代わりにすることです。Claude Codeはレビュー観点の列挙や差分検出に強い一方、最新のIAM仕様、サービス別のリソースレベル権限、条件キーの対応状況は公式ドキュメントとAccess Analyzerで確認する必要があります。
運用レビューの型
Pull Requestでは、ポリシー本文だけでなく、次のチェックリストをコメントに貼ります。
- このロールを使う実行主体は1つに絞れているか
Actionに削除、IAM管理、全サービス操作が混ざっていないかResourceが本番のARN、prefix、リージョン、アカウントIDに固定されているかConditionはサービスの呼び出し方に合っているか- Access Analyzerの
SECURITY_WARNINGとERRORが残っていないか - CloudTrailやCloudWatch Logsで実際のアクセス履歴を後から見直せるか
- 30日後に未使用権限を削るチケットを作ったか
IAMは一度作って終わりではありません。新機能追加、障害対応、外部連携、担当者交代のたびに権限は太ります。定期的な棚卸しは地味ですが、AdSense向けの技術記事と同じで、信頼を積み上げる作業です。
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Lambdaの実行ロール設計はAWS Lambda完全ガイド、S3のprefix設計はAWS S3入門、ログ監査はAWS CloudWatch活用、全体の安全設計はClaude Codeセキュリティ実践と合わせて読むとつながります。
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この記事で紹介した内容を実際に試した結果、Claude Codeだけでポリシーを作った時より、最初にユースケース表を書くほうが修正回数は明らかに減りました。特に「禁止する操作」をプロンプトに含めると、DeleteObjectや広いlogs:*が混ざる頻度が下がります。最後にAccess Analyzerと拒否テストを入れると、安心感ではなく証拠を持ってレビューできるようになりました。
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この記事を書いた人
Masa
Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。
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